748S 諸々整備&修理
ご依頼内容は タイベル交換、フロントフォークシール交換他 現在の車両状況の確認という感じでのご依頼でした。この車両が初ドカで 改造パーツも装着されている車両でしたのでオーナー様はこれが正しい状態なのかの判断も分からなかったことでもあるようです。
その他 定番のテルミスリップオン、APTCクラッチが奢られてましたね。
バラす前に軽く試走してみましたが クラッチがやたら扱いづらいです。外観からもかなりの期間 オーバーホールされてなかってあろう感なのでそれが一因は間違いないですね。元々 ドカの乾式はレースからやってきている装備ですので 街中乗りっぱなしというわけには行かないのですよね。ましてや 後付けの クラッチキットでスリッパー機構やAPTCクラッチのような 付加機構も含んだものほど 定期メンテは大事ですね。
で、タイベルはカバー裏側に以前の交換時期がしっかり記入されていたので参考になりました。こういうの整備士としては好感もてますね。
前回は 最後は2011年9月に交換となっているようで 実際装着ベルトもヒドイ状態ではないものの経年での硬化がみられてましたので 相応でしたね。
そして 気になったクラッチですが。APTCクラッチはイタリアのadige社が作ったクラッチ一式機構です。2004年~のドカのS2RやKTM690LC4エンジン系に純正搭載されているものと機構は同じです。748等のドカ乾式用は 後買いの物となります。で、 機構内容としては ①エンジン低回転時はクラッチレバーの握る重さが軽くなる ②高回転になるほどクラッチ板の圧着圧力が大きくなる ③スリッパー機構がある が大きなところですか。①なんかは大型エンジンにはありがたいものです。しかし れらが煩雑に作動する関係上 潤滑するものが必要となるのですね。湿式クラッチ車の S2RやLC4エンジンはエンジンオイルが潤滑の役目をしてくれるのでいいのですが 乾式クラッチの場合なにもありませんので 組み込み時にある程度のグリスで対処するしかないんです。でもそのグリスもエンジンの熱や作動環境により劣化していくわけで これらがクラッチ周りの作動不良を起こす要因にもなります。
で、バラしてみまして案の定 APTCクラッチ特有の組み込み時に内部に封入しているモリブデングリスが封入用のOリングから漏れだして 周囲のクラッチ板類に焼き付いている状態でしたね。これで ヒドイジャダーが出ていたようです。一応 キレイに出来る限り清掃してグリスも入れ替えて 再組み込み。その後の試走では一応 良い感触には戻りました。
ここからは tetsu個人的 余談話しですが.......
ドカの社外クラッチ類(代表的なのはSTMやAPTCですか)について。
装着見た目は間違いなくカッコいいですが(穴あきクラッチカバー前提ですが(笑)).......
そしてうたい文句の嬉しい機構に目が行きがちですが.......
tetsu的には よほどそういう機構を使いたい限りでないかぎり 特に街中なんかは純正クラッチ方式で走っている方がなにかと幸せではないかと思います。そもそも高価ですし。
tetsuは自分の996Rでレース使用時に新品のSTMのスリッパークラッチを組み込んだことがありますが、その操作感が好きになれなくて走行1時間ほどで外してしまった経緯があります。
後の耐久性やメンテ費用を考えた場合 費用対効果を考えさせられます。
また 後期型の748Rや749Rに装備されている「純正スリッパー」機構は更に嬉しくないものとも思います。社外より安いからと言って(あ、オール新品で揃えると安くはないですね....失礼) わざわざあれを装着するものでもない構造です(正直 スリッパー機構部が廉価されている構造なので)。
素直に「普通の機構」にしておくことをお勧めします。
おまけに 各サードパーティのクラッチ一式類はそれぞれ専用独自の工具がないと組めなかったりするのでその点もtetsu個人的に好きになれないところですか(余計に手がかかる)。
現行国産のSS系は全車 スリッパー機構クラッチが標準装備ですが 俊逸な機構に加え 高耐久性でもあります。時代の流れもありますが 国産一般市販車に搭載できるのも やはり湿式クラッチ構造によるところのほうが大きいでしょうね。ドカもパニガーレよりの湿式化はある意味正解だと思いました。
と 街のバイク屋オヤジのつぶやき意見でした(笑)。
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