不慮な故障での焼き付き=V100
まだまだ伊東二輪ではトラスト時代より続く多数車両のスズキアドレスV100。普通に乗っていてオイルをケチらなく、一般的な整備を適度に施していればかなり丈夫なエンジンなのは何度か当ブログでも紹介してますね。
現在 12万キロ越え車両が1台、9万キロ車両1台、5万キロ台車両3台、これ以外にもまだまだ活躍している車両です。
が、今回のようにメカ的に故障を起こしてしまい買い替えを余儀なくなってしまうこともあります....こういうのは本当に悲しいことですが......部品が出るので修理すれば直せるのですが 費用対効果としては残念ながらもったいなくなってしまいます。勿論、乗り手がどうしてもV100に乗っていきたいというのならこちらも対応はしますが。今回はそんな悲しい事例です。
常連様の2000年型 V100 通勤スペシャルでしたが、先週あたりに 走行中突然 エンジンストールして停止。その後 比較的すぐにエンジンかかるもしばらく走ると また止まると。それを繰り返して走るような感じになってしまったと。聞いていると 燃料系統が原因のような感じでしたが.....
で、当店より近所でしたので ダマしダマし乗ってきて 診て診ます。
停止状態でのエンジン状態ではまぁまぁな感じですか。走行29000kmですので通常ならまだまだOKなのですが.....少しチキチキとした音が出ている感もあります。まぁ、V100は元々 走行を重ねてくると特に駆動系から金属音が出ますので なかなか判断っも難しいのですが。
何度かアクセル開け閉めしてもエンジンストールする気配はないですね。
本人曰くは、ストールを繰り返したあと お店に乗ってくるまでは それほどアクセル開けずに来たらエンジンストールせずに乗れてきたと.......
ということを推測すると、「点火」「吸気」「排気」どれも考えられてしまします。
順に思い当たる順番で診ていきますがどこもこういった症状を引き起こす要因になりえている箇所はなく、逆に優等生でした。こうなると マフラーが怪しくなってきます。
2ストのマフラー詰まりは色々なパターンに遭遇してますので、本当に分かりづらいです。V100の場合、お店でテスト用のマフラーがあるので(tetsu自身のV100もありますし)まだ判断つきますが。おいそれと新品買い替えれるほど安いものではありませんのでね。
で、取り外す前に マフラーの排気温度を手で確認してみますと、やたら熱いのに気が付きました。通常の排気よりあきらかに熱いです。
この年式のV100のマフラーは丁度スクーターにも排気ガス規制が入って来た頃の物でそれまでのタイプより マフラーが大型化して、より内部燃焼させようとする仕様になったおかげで マフラー寿命が短命になったものなので 従来よりは排気温度は高めになるのですがそれにしても熱い。
そう思いつつもテスト用のマフラーに付け替えてテスト走行してみます。排気音も変わったので、「お~、やっぱりマフラーじゃない原因は」と思いながらオーナーがグルりとお店の周辺を走ってきました。結果、アクセルワイドオープンにすると止まりそうな感じになりアクセル戻したとのこと。
???としばし考えつつ、最初の頃に思ったイヤな予感を思い出し 再度マフラー外して 今度は排気ポート側からエンジン内のピストンの状態を確認してみますと......
ガ~ン! 思った通り、焼き付いてます.......
写真は排気口よりシリンダー内を覗きこんだ図です。奥に見える 縦傷沢山あるものがピストンの排気がわの側面ですね。上部にピストンリングも見えます。
写真のようにピストンに縦傷いっぱいです.....
当該車両は吸、排気改造なし、オイルもちゃんとしたもの、乗り手はたまに全開で乗ってましたがなそれでも通常これほど全面的に縦傷入りませんので......
内部部品が破損していたらこれでは済みませんし.......
ではなにが考えられるかと言うと、以前にも一度遭遇したことある症例ですが、「オイルポンプギアの破損」かと思われます。
回転数に応じた2サイクルオイルの供給が著しく 少なくなってしまったのでしょう。なので、排気温度も高くなっていたと思われます。
V100のオイルポンプのギアはエンジンクランク側から返還される部分のギアが樹脂製でできているため なんかしらの抵抗がかかってくるとギア面が丸くなってきて 本来の回転数で回せなくなってしまう可能性な構造です。とはいえ、確率論では今のところ少ない事例ですが V100のオイルポンプはエンジン下さないと取り外して診れません。調子が悪くなってきた判断もなかなかつきませんので厄介ですね。2ストの分離混合が確立されていると言っても、それをしているのは機械的要素なので 機械側がトラブルのもあり得ます。今回ばかしは仕方ありません。オーナーも攻めれません。
こういった事例には我々も対応が難しいものですので、こういった結末は整備する側としても悲しい結末として受け止めるしかできません。
残念ながらしっかり修理するにはそれ相応のお値段がかかってしまうことから、後継機のアドレスV125に乗り換えていただきました。お疲れさまでした。
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