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あなたと 楽しい二輪車人生を共に歩むために。

KTM150EXC TPI 腰上OH

ちょっと前に行った作業風景です。
林道部 Sinくんの エンデューロ車 KTM150EXC TPIの腰上OHの模様です。


今年の初めに車体全体グリスアップ他整備で預かった際 妙にエンジン音 特にピストンの打音が大きい指摘をしたところ ここ最近やはり本人も大きいと感じており、丁度 一緒に練習する仲間で MY2021の同型 150がいてそのエンジン音に比べて やはりエンジン音(特にアイドリング時)が大きいとのことで 一度腰上確認という方向に。
tetsuの感覚的には 2本あるピストンリングのうち 下側が固着もしくは折れているのではっていう感じな打音でした。始動性は問題ないようでしたので 圧縮の問題で一本目のリングは生きているとも思いましたし。

当該車両 走行距離 1250km、使用時間 72時間と 一応 まだメーカー推奨の腰上OH時期ではないですが クロスカントリーレース使用が少ないとはいえ ハード使用の方が多く 使用用途が主に 「登る」系統で半クラ高回転も多用する兼ね合いもありますので やはりレーサーとしては定期メンテ兼ねて診ておくのは必至ですよね。
距離的には ピストンそのままでリング交換のみで行けそうなのですが バラす前のピストン打音が気になったのでピストンセットで交換します。

ピストンを発注する際に気が付いたのですが、部番が変更になっている。しかも その部番が大幅に違うものに変更になっている点。
通常 マイナーチェンジくらいは末尾の数字二けたくらいが変わるくらいですが 今回 全ての表記が変更になっているのが少し疑問に思いました(後にこれが判明します)。
SinくんのモデルはMY2020。150TPIとしては初期型。初期型のピストンの部番から現在部番変更されており それらは 2021年モデル以降と統一になっております。バラす前から気になる点ですね。


久しぶりの2スト腰上OHです。やはり4ストのような バラす物が多くない2ストはこういう時はいいですね(笑)。
流石レーサー、しかも150ccなのでシリンダーも小さいのもあり tetsuイメージ的には「あっという間」にバラけます。
取り外すのにもCRMのような「あれ外して、これ外して」という 腰上まで到達する前にバラすもの沢山とはならないのでがいいです。
TPI=2ストインジェクションなのでシリンダーに インジェクターとホースが繋がっていたりしますがこの辺もそう邪魔にはなりません。機械式排気バルブの作動部との連結を外すのもこのモデルは簡単方式なので おおむねこの辺の整備性は良いと感じました。

で、シリンダー外しましたの図。

吸気側 下側辺りには なにかカジった形跡がありましたね。ピストンの焼き付きというよりも エアクリーナ側から吸い込んだ異物系による作用の感じ。幸いシリンダーのメッキ部までは酷く削れてなかったのでこちらは耐水ペーパー修正で。


シリンダー側面の掃気ポート類も一部面白い位置にあったりします。しかし 距離の割に思った以上に吹き抜け跡もありますね(黒い筋がそうです)。やはりある程度高温下での運用を強いられているかもあるのでしょうが.......

こちらはシリンダーヘッド側。


KTM系のヘッドは面白い事に 燃焼室側とウォータージャケット挟んだ外側とこのように分離します。アフターチューニングパーツでこの燃焼室側だけ交換して圧縮変更できるようになっているのです。アプリリアのロードレーサーなんかも昔 こうなってましたね。tetsu乗ってた ホンダRS125やRS250は ヘッド丸ごと交換でしたがそちらが一般的な知見ですよね。
セパレートにする意味や利点がなにかはtetsuも知りえませんが ある意味凝ってますよね。ヘッドガスケットが無くて 水回りとの境目がOリングなのはホンダ RS125や250も同じです。
当時はこれ見て 「ガスケットないのかよ!」って感心したものでしたが(笑)。

そして問題のピストン。

吸気側

シリンダー側と同じ吸気側 ピストンスカート部にカジりの跡があります。ピストン側の方が材質的な関係上 シリンダーより削れてますね。一部それらの剥離したものがシリンダー側にも付着しておりましたし。

しかし それ以外には予想外に打音の原因になるほどの傷やアタりが外周見まわしてもありませんね。打音の一番の原因になる ピストンリングの固着等も見受けられないですし。この時点ではちょっと困惑気味でもあったtetsuでしたが 旧↔新ピストン見比べて 驚きの違いが。

部番変更ピストンは 製作工程、形状 と全て別物になっておりました。材質も同じアルミでしょうがなにか違うような感じも。

排気側


側面


下側より(左の旧ピストンの鍛造 マシニング加工の感じがカッコいいのですがね......)


見た目で大きな違いは 旧型=鍛造ピストン削り出し。対して 新型=鋳造ピストン型抜き。
形状では 吸気側、排気側とも スカート形状。更には 旧型は ピストンピン上部辺りに掃気ポート絡みとも思える 謎の窪みがピストン側面にありますが 新型はなく 一般的見慣れた形状ですね。
リングの違いは確認できませんでしたが やはりピストン形状の違い、これかなり大幅な違いです。
これほど違うのでやはり初期のピストン周りがなにかよろしくなかったのでしょう。
普通に考えると 鍛造ピストンにて削り出しの方がお金かかってますし 強度もあるでしょうに.....
しかも 旧モデルの方が スカート面積広いから首振りにも強い方向性なはずなのですが......
熱的膨張的問題なのか硬度等なのか、なにが問題だったのか不明ですが 現代 製作事前に行う 構造解析ソフトの能力をもってしても 計り知れない事例が出るということです。

と色々考えつつも これで謎の打音が消えてくれること期待。


腰下クランク側はキレイなもので、気になる点もなかったので ノータッチで順に戻していきます。


燃焼室もキレイキレイにてピッカピカに。街乗り車のようなカーボンバキバキこびりつきではないのでキレイにするのも楽ですね。



シリンダー乗っけて 以降 早くエンジンかけたかったので 写真ありませんが(笑)。

組み上がり、エンジン始動。見事に打音もなくなり普通のエンジン音にもどりました。

これで Sinくん 5月の日野ハード 部長・主任 共々  ぶちかましてください!
怪我無い範囲でね.....
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